魔法使いと刑事たちの夏

 八王子市を舞台にドM刑事主人公小山田聡介と聡介が見惚れている上司椿木綾乃に新米家政婦として小山田家在住の魔法使いリリィを中心に事件を解決するユーモアミステリー小説です。リリィの魔法で事件を解決する機会が多いですが、聡介はそれに依存しないよう捜査するのが特徴です。シリーズ作品全3巻で、当書は2巻にあたります。

 犯行から各回がはじまるので、犯人の正体を知った状態で事件の解決過程を読むというあまり見ない形式になっています。『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』シリーズに近いのかもしれません。また4話収録で約300ページと、一話辺りが短く読みやすくなっています。軽快な文章で話のテンポも速く、重苦しい雰囲気がありません。

 著者紹介もしておきます。

 

東川篤哉(1968-)広島県尾道市生まれ。1996年、鮎川哲也編『本格推理⑧』に「中途半端な密室」が初掲載。『謎解きはディナーのあとで』で2011年本屋大賞受賞。主な作品に『もう誘拐なんてしない』『魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?』『ライオンの棲む街~平塚おんな探偵の事件簿~』などがある。

 

 

 図書館に行ったときに返却コーナーで偶然発見したのがきっかけです。表紙のインパクトが強かったので、表紙借りをして、内容はほとんど見なかったです。シリーズ作品の続編であることも未知でした。前作はおろかミステリー小説自体読んだことがないので、心配して読み始めました。しかし一話完結に加え、最序盤に主要人物の紹介があったので、置き去りにされなかったです。もちろん前作読了した方がより理解できるのは言うまでもないことですが、前作未読者でもストーリーについていけました。新規読者への配慮を感じます。

 また登場人物の個性が強く、ストーリー重視よりかはキャラ重視の印象を受けました。聡介とリリィの関係が徐々に変化していく様子もあり、恋愛要素好きな人が欲しそうな描写もあります。

 ただ犯人の白状が速い、トリックが破られてからの展開が急ぎ足気味な点が気になりました。短編なので仕方ない部分でもあります。それにサスペンスドラマに近い展開を期待した部分もあったので、自業自得な気もします。とはいえ、気軽にミステリー小説を読みたいときはこの分量ぐらいがいいとも思えます。

 

 ミステリー小説興味あるけど読んだことない、東川篤哉作品を『謎解きはディナーのあとで』しか知らない、そういった方にオススメできる一冊です。