『経済の考え方がわかる本』

  「帰省ラッシュ」、「失敗した買い物」をはじめに身近な例を中心に扱いながら、経済の仕組みと専門用語を学べる著書です。先生と数人の生徒との会話形式で進行していくので、同席して会話を聞くスタンスで読めます。また生徒側が頻出しやすい勘違い・間違いを述べ、先生がそれを指摘する場面もあります。それによって、会話形式で起こりうる生徒側が即理解して読者が置き去りになる、といった事態を予防しています。

    岩波ジュニア新書なので全14章約200ページと、気軽に読める分量になってます。それだけでなく、各章最後に選択式と記述式の練習問題が用意されていて、読んだ内容をアウトプットできるようになっています。読書によってインプットしたけどそれっきりで忘れてしまうことがあるでしょう、そういった事態を回避できます。また記述式問題は自分の生き方について考える機会になるものもあります。一部紹介しますので、一度考えてみてください。

 

 会社を設立することと、すでにある会社で働くことと、どちらが自分にとってふさわしい生き方だと思いますか(p.120)

 あなたはゼネラリストの生き方がいいか、スペシャリストの生き方がいいか、比較優位の考え方を参考に考えてください。(p.133)

 

著者が複数人いるので、短めに紹介します。

新井明氏(1949‐2004)は都立西高等学校教諭で著書に『新しい経済教育のすすめ』などを執筆した方です。柳川範之氏(1963-)は東京大学経済学部教授で著書に『契約と組織の経済学』などを執筆された方です。新井紀子氏(1962-)は国立情報学部研究社会共有知研究センター所長・教授で『数学にときめく』などを執筆されました。e-教室は新井紀子氏らが開発を行った「NetCommons」という情報共有ポータルシステムを活用して、研究員・教員らが協力しながら、中高生とともにインターネット上で高度な学びの創出を試みるプロジェクトです(J-STAGEより)。

 

私が一番勉強になったのは機会費用です。今まで買い物するとき費用と効果の比較はするようにしてました。しかし、決定に対してコストを支払う観点から考えたことが無かったです。集まりなどでカラオケフリータイム予約で行ったときに、2時間でつまらなくなっても予約時間一杯まで粘ることもありました。当時は忍耐力が云々と言っていましたが、今となっては他の場所での遊びに時間を回したほうが良かったと少し思っています。しかし、これも経済の基礎を学んだから気づけたわけで、疑問に思うこともなかったと考えると少しぞっとします......

 

経済学未専攻で仕組みが理解できていない、春から社会人になるけど経済について勉強したことない、そんな方にオススメの一冊となっています。

 

今後ともよろしくお願いします。