『経済のしくみ100話』

 「円高」「価格」「景気循環」など、聞く頻度が高い経済用語を扱い、それらを各見開き2ページで100個解説しているのが特徴です。3章構成で、1章が頻出単語、2章が基本的用語、3章が経済問題を中心に取り扱っています。昨今話題の投資は2章、格差は3章で述べており、ホットな話題にも対応しています。説明が難しいことを平易な文章で述べていて、ビジネス本特有の取っつきにくさが薄いです。一部紹介するので、読んでください。

 

 「円高」円の値打ちは二種類あります。まず体内的価値。日本国内で円を使うときの値打ちです。いわば、円の「内面」です。もうひとつは対外的価値。海外で使うときの勝ちです。「外面」です。(P.2)

 

 「価格」「コレ、値段ナンボ?」は、自然ですが、「価格ナンボヤ?」は、どうもネ、でしょ?

しかし、どちらもヤマトコトバで言って「あたい」(「価」、「値」)のグレード=(「格」、「段」)という意味。つまり「あたい」の大小ということです。(P.88)

 

 著者である岸本重陳氏(1937-1999)は難聴に苦しみながら東京大学院を博士課程を修了し、最終的に横浜国立大学大学院国際開発研究科教授として勤務された方です。話題著書『「中流」の幻想』を執筆したことでも有名で、それ以外にも単著を10冊以上世に出しています。

 

 私は大学で経済を専攻しておらず、経済ニュースを見ても表層だけを理解するのがやっとでした。それもそのはず、高校一年生で受けた現代社会が経済を勉強する最後の機会だったからです。そんな折にこの本と出会い、平易な文章で経済学初心者でも理解できる点に驚きました。というのも、当著書は岩波ジュニア新書出版で中学生・高校生対象にしており、そのおかげで私でも読み切れました。読了したときに授業で「岩波ジュニア新書読めば専門外分野でも最低限の知識を得られる」と言われたのを思い出し、それは本当だったと実感しました。中学生・高校生対象となると内容不十分に思われがちですが、大人の方でも勉強になります。岩波ジュニア新書恐ろしや......

 1988年出版で30年以上昔なので現代に即していない内容も存在しますが、基礎を固めるには十分な分量です。

 語句は知ってるけど説明ができない、経済を勉強してこなかった、そんな方にお勧めできる一冊です。新版でも初版1994年と古いので、古本屋とか図書館の活用推奨です。

 

今後ともよろしくお願いします。