『「カルト」はすぐ隣に』からわかるカルトの脅威
カルトは身近に存在し、引き込まれる危険性を主張している本です。オウム真理教入信者の取材を通じ、一般人がカルトに支配され犯行に及ぶ様子を書いています。ある信者はヨーガの本をきっかけに、またある信者は自分の近い人がオウム信者となってそれにつられるように。
頭のおかしい人=カルトにはまる、といったイメージを持たれがちですが、実際は善良な人がマインドコントロールされています。しかも高学歴の人が多く、オウムの幹部構成もそれに該当します(組織内で高学歴を優遇していた制度もある)。
当書は5章構成で、1章は教祖である麻原彰晃(本名:松本智津夫)の出生及び活動、2章は当時の社会情勢、3~4章は信者の麻原との出会いから裁判まで、5章はまとめを主に扱っています。特に、3章は一個人のみ扱っており、運転手として多くの事件に関与していたこともあり、事件も多く紹介されます。また、当時における組織構図の紹介も入っています。
例のごとく、著者紹介をします。
1958年、東京都生まれ、早稲田大学政治経済学部卒業、神奈川新聞社の社会部記者を経て、フリージャーナリストに。新興宗、災害、冤罪のほか、若者の悩みや生き方の問題に取り組む。95年一連のオウム真理教報道で菊池寛賞を受賞。主な著書は『救世主の野望』『オウム事件はなぜ起きたか』(文春e-books)『名張毒ブドウ殺人事件』(岩波現代文庫)『勇気ってなんだろう』(岩波ジュニア新書)他。
当書のタイトル通り「カルト」は身近で、歴史的に見ても長い年月存在していたことを理解しました。『日本書紀』にもカルトらしき集団は存在(P.199)し、ドイツのナチスもカルトに近い状態でした。
カルトで怖いのは、マインドコントロールされて支配されることに加え、責任感の麻痺と考えます。オウム信者の大半は指示に従って作業したことに加え分業していたから、自分が事件に関与しているという発想が無かったです。
これはナチスも同じで、上層部が書類にサインするだけで虐殺が執行される。しかし、サインした本人は現場を知らないから罪悪感を持ちにくい。そういった意味でオウムとナチスは近いものがあると思います。
カルト関連だとカルロ・ゼン『テロール教授の怪しい従業』も該当します。Twitterで発見し、読了しました。これもカルトを扱った内容で、それだけ被害が出ていることが予想されます。この様に、警鐘を鳴らす本・漫画が出版されている現状です。
カルトは近くに存在し、誰もがその罠に嵌る危険性をもっています。カルト・テロリズムに詳しくない方こそ、この本を読んで耐性を身に着けてほしいです!それも年代関係なく。岩波ジュニア新書で出版した意味がそこにあると思うからです。